生前整理アドバイザーのストーリー

【こんなにも自分と向き合ったことは、人生で一度もありませんでした】

生前整理アドバイザー:中川 智子

私が突然の乳癌宣告を受けたのは10数年前。あのときは半日の間、大泣きして過ごしました。

しかし、泣き疲れてだんだん冷静になってきた頃、頭にふと浮かんだのは、家計を一手に引き受けていた私がこのまま死んだら、「家族はどうなる?」という問い。
「何が何処にあるのか?」「どの銀行にどれだけ預けているのか?」「毎月どれだけの収支があるのか?」家族は誰も知りません。

手術は4日後。もう家に戻ってこられないかもしれないと思い、家計の収支について詳細を記した紙の用意、家族に見られたくない引出しの整理、昔書いた大切な人への手紙や服の処分など、思いつく限りのことはすべてやったつもりで手術に臨みました。

幸い手術は成功し、抗がん剤治療や化学療法に移行。その後に続く3年間の闘病生活では、気持ちが折れそうになったとき、傍で寄り添う家族の愛情に何度も救われました。

乳癌をきっかけに身の回りの片づけを始めた私ですが、自己流の片づけではすぐに元へ戻ってしまい、なかなか思うようにいきません。そこで、「専門家の片づけ講座を受講してみよう!」と思い立ち、学んでいくうちに、生前整理を知りました。

「生前整理認定講座」を受講し、生前整理には「物・心・情報」の整理があることを学びました。13年前、私が無意識にとった行動こそが生前整理だったわけですが、私がおこなったのはほんの一部だと分かったのです。

生前整理を学んだおかげで、大好きで大切な家族が、自分の死後に揉めることなく、周りに振り回されることなく、いつまでも仲良く暮らして欲しいと思えるようになりました。

それからというもの、私は私の希望の葬儀の話や家族に対する想いを、夫や子どもに伝えるようにしてきました。
その度に夫は、「死ぬ準備じゃないか!そんな悲しい話はやめてくれ!」と反対。おそらく、乳癌のときに私の死を覚悟せざるを得ない状況だったからだと思います。

しかし私は、「この世を後にするとき、自分(私)の想いは周りの意見に押し流されやすいこと」「生前整理をしないと、遺された家族への負担が大きくなること」を粘り強く伝え続けました。

やがて、生前整理の情報収集や勉強会に出かけて行く楽しそうな私の姿を見ているうちに、夫は何も言わなくなりました。

そんなある日のこと。
家族全員が集まった席で、夫は自分たちの生前葬やお墓のこと、亡き後の家のこと、子どもたちへの想いなどを口にし始めたのです。

これには家族全員が驚かされました。

生前葬会場

今年に入ってからは、夫の提案で、夫婦でおこなう生前葬の会場を2人で見学し、見積もりを依頼。お墓は持たないけれど、手を合わせる場所くらいは残しておこうということで、お骨を納める場所と金額も確認してきました。

さらに、それぞれ自分たちの兄弟にも、生前葬とお墓のことを報告し、了解を得ることができました。
最愛の人の死を考えることはとても辛く悲しいことですが、それ以上に、「自分の死後の揉めごとは辛い」ということを、夫は理解してくれたのです。

最近では子どもたちからも「生前整理帳にしっかり書いておいてね」と言われるようになりました。生前整理認定講座で知った「生前整理帳」は、遺された家族へ最大のプレゼントだと思います。

生前整理は、「暗い」「悲しい」といったイメージがあります。確かに生前整理は、終末期や葬儀のことも学びますが、こんなにも自分と向き合ったことは、人生で一度もありませんでした。自分としっかり向き合うことで、大切な人とやりたいことや、できていないことが見えてきます。癌の再発の可能性がある年数は過ぎましたが、今はいつか訪れる日のために、やりたいと思ったことにどんどん挑戦しています。目標を掲げ、達成していく喜びも、生きて行く上での励みです。「まだまだ元気でいなくては」と、今まで以上に健康に気をつけるようになりました。

年老いた人が先に亡くなるとは限りません、若い人も、もしもを考えてみてください。あなたもあなたの周りの人も、あなたが突然亡くなったら、後悔することはゼロではないでしょう?そう考えると、必然的に生前整理が大切だと思えてくるはずです。

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