生前整理イベントレポート

第1回「子の立場で体験する実家の片付け体験会」

2019年3月11日(月)。
生前整理普及協会主催の初めての生前整理イベント「子の立場で体験する実家の片付け体験会」を品川(東京都港区)で開催しました。

このイベントは、生前整理がまだまだ「亡くなる準備」や「荷物の片付け」だけと思われている世間のイメージを変え、大切な家族や人生と向き合い、前向きに生きることにつながることを一般の人たちに伝え、体験を通して学んでいただくために企画しました。

参加者は子世代の女性6名。テレビや新聞社など、多くのメディアが訪れました。
10時~12時までの2時間。イベントは、三浦靖広生前整理診断士と大津たまみ代表による解説や事例の紹介、そして実際に親の家にありがちなリビングのテーブルを再現し、参加者とともに片付けをしていく形で進められました。

生前整理は、物・心・情報を整理し、時間をかけて取り組むこと

「子は『物を捨てる』『処分する』ということに気が向きがちですが、これが大きな問題。
生前整理は、生きることを前提に、物、心、情報を整理すること。業者に物を持って行ってもらうのが生前整理ではない。物をきっかけに、親子で会話をしながら行って欲しい」。

三浦生前整理診断士は、「生前整理をしなかったらどうなるか」を、物・心・情報に分けて解説します。


特に心の部分のメリットとして、「これからより良く生きていこうと前向きになれる」「後悔も肯定的に捉えられるようになる」と強調。

情報の部分についても、「老後の備えの不足や問題に気付くことができるので、事前に対策が立てられる」と力説しました。

 

その後、生前整理を行えなかったために悲惨な最期を迎えた男性の事例や、生前整理を行ったために幸せな最期を迎えられた女性などの事例を紹介。

男性の事例では、実際に男性が生活していた部屋がスクリーンに映し出されると、目を覆いたくなるほどの汚さに、参加者たちは驚きの声を上げました。

一方、女性の事例では、家事ができない夫を心配して生活説明書を作り、可愛い孫の成長に合わせてランドセルやお祝いの手紙を用意して旅立ったというエピソードに、思わず涙する参加者もいました。

 


最後に、自身の幼い頃に思いを馳せ、大切な人を思い浮かべてメッセージを書くワークに取り組みました。

「余命宣告を受けた人の支援していると、家族よりその人の心を知ることも多い。しかし、本当に伝えたい人に伝えたいことを、伝えられないことはとても苦しいこと。今日この後、ぜひ自分の命や家族と向き合って欲しい。毎日が生前整理の日。そう思うと有意義な人生を歩めると思う」

 

三浦生前整理診断士は、「視点、話し方、接し方を変えると、親との距離感がぐっと縮まり、親の家の片付けが上手くいく」と言います。そして「親の片付けをする前に、自分自身が生前整理をしてください」とまとめました。


続いて大津代表は、親の家の片付けには、「決断力・判断力・分別力・管理力・体力の5つの力が必要」というところから話をはじめました。

多くの人が、「いつかやろうと思っていた」けれど、その「いつか」が来なかったために、生前整理が遺品整理になってしまった。「私たちも親も、今日が一番若い。だから、生前整理を始めるなら今です」と語調を強めます。


そして、実際に片付けを始める前に、家全体を俯瞰して見ることが大切だと、会場中央のテーブルに参加者たちを注目させました。

このテーブルは家のリビングのテーブルという設定で置かれています。リビングにあるテーブルが持つ本来の目的は「食事」。しかし、このテーブルの上には物が溢れ、とても食事ができる状態ではありません。

 

大津代表は、「要る」「要らない」「迷い」「移動」4つに仕切られたブルーのシートを用意し、この上にテーブルにある物を分けていきます。生前整理で必ず出てくる「思い出」がある物は、別に「思い出箱」を用意して入れていきます。

要らないものは、現在も未来にも使うことがないもの。ただし、要らないものでも「捨てる」とは言わず、「手放す」と言いましょうと強調。「要る」か「要らない」か、8秒以上迷った場合は「迷い」に分類します。片付けを始めると「迷い」が多くなりがちですが、半年後にもう一度見直すと減らすことができるのだそうです。

生前整理は「時間をかけて取り組むこと」。大津代表は、お父さんの生前整理を、10年かけて行ったと話しました。

 

「人生を午前と午後に分けて考えると、子の45歳頃をさかいに、それより前の午前の時間は、子より親のほうがいろいろなことができたけれど、後の午後の時間は、子のほうが親よりたくさんのことができるようになっています。このときに、親子関係を少し変えないと、上手く関係が継続できません」

しっかり話を聞く傾聴。相手を認める承認。興味を持って質問すること。生前整理のコーチングという手法で片付けを進めると良いようです。

まずは自分の生前整理から

お片付け実践タイムに入ると、再び三浦生前整理診断士が登場。
大津代表と参加者たち全員がテーブルの周りに集まり、実際にテーブルの上にあるさまざまな物を「要る」「要らない」「迷い」「移動」「思い出」に分けていきながら、その物がそこにある「意味」や「兆し」を探っていきます。

例えばカセットテープなら、「この曲好きなの?」「いつ買ったの?」といった会話をしながら、子が「まだ聴きたいでしょ?CDに焼いてあげようか?」という提案をしたので「移動」に分類。
作業していると何をするのか忘れてしまうため、付箋に「CDに焼くため持ち帰る」とメモして貼っておくと良いとアドバイスがありました。

また、古くて価値がありそうなものなら、「エステートセール」というアメリカの最新リサイクルシステムを利用するという方法も紹介。

薬があったら直接どこが悪いのか訊ねるだけでなく、薬の名前をネットで検索して情報を得ることもできます。通帳や保険の証書が出てきたら、貯金や加入している保険について知るきっかけになります。

部屋にある物から、親が今どんなことに興味があるのか。何に不安を感じているのかを探ることができるのです。


大津代表が「生前整理をスムーズに行うコツは、まず、自分がやること。整理や片付けの大変さ、時間がかかるものなんだということを知ること。そして、元気なうちにやることです。
生前整理を行う人が一人でも増えることを願っている」と締めると、会場は大きな拍手に包まれました。

 


参加者たちは、「目から鱗の連続でした」「親子関係の再構築の大切さを認識しました」「実践に活かせそうです」という前向きな意見が多く寄せられ、深い理解が得られたようでした。

いずれも、すでに親の家の片付けに直面していたり、いつかやらなきゃと思っていたなど、生前整理に興味があって参加した方ばかり。イベント前と後では、参加者の方たちの表情も明るく変化しているように見えました。

今回の参加者たちが近い将来、まずは自分の生前整理から取り組み始めてくれると良いですね。

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